ポンシュ

Ponsh

貴醸酒とは 酒で仕込む濃厚な甘口

種類#中級者#ギフト#kijoshu#sweetness dryness

甘口の日本酒を探している方、そして食後酒やギフトの候補を探している方へ。「貴醸酒(きじょうしゅ)」は、仕込み水の一部を清酒に置き換えて造る、濃厚で甘い日本酒です。とろりとした口当たりと、梅酒を思わせる甘みを持ち、少量を食後に楽しむ酒として知られます。酒で仕込むとなぜ甘く濃くなるのか、その味わいと合わせ方まで順にほどいていきます。

貴醸酒とは 水の一部を清酒に替えて仕込む酒

貴醸酒とは、仕込み水の一部、あるいは全部に清酒を用いて醸造した清酒です。ここでいう仕込み水とは、もろみを仕込むときに加える水を指します。もろみは、蒸米・麹・水・酵母が溶け合って発酵する、酒のもとになる液のこと。この水の役目の一部を、できあがった清酒に肩代わりさせる。それが貴醸酒の骨格です。

現代の造り方は、1970年代に旧国税庁醸造試験所(現在の酒類総合研究所)が開発した製法がもとになっています。従来のイメージとは異なる、贈答にも向く上質な日本酒を目指して生まれた酒でした。名前は、甘口の貴腐ワインになぞらえて付けられたとされます。

味の設計としては、デザートワインに近い立ち位置です。分類上はあくまで清酒ですが、飲み方や合わせ方は一般の食中酒とかなり違います。

なぜ甘く濃くなるのか

貴醸酒が甘くなる理由は、酒で仕込むと発酵が進みにくくなるからです。

日本酒は米・麹・水を三回に分けて仕込みます。これを三段仕込みと呼びます。多くの貴醸酒では、その最後の仕込みである「留添(とめぞえ)」で、水の代わりに清酒を加えます。すると、もろみのアルコール度数が早い段階から高くなります。

アルコールが濃い環境では、糖をアルコールに変える酵母の働きが弱まります。ふつうなら酵母が食べてしまう糖が、分解されずにもろみへ残ります。この残った糖が、濃厚な甘みの正体です。仕込み水の一部が水ではなく酒なので、味の密度そのものも高くなります。甘辛や酸のものさしについては味と香りの読み方もあわせてどうぞ。

参考までに、造りの違いを大きくつかむと次のようになります。数字は方向性を示す目安で、実際の割合は蔵によって変わります。

一般的な清酒 貴醸酒
仕込みに使う液体 水の一部を清酒に置換
もろみのアルコール ゆるやかに上がる 早くから高い
残る糖 少なめ 多い
味の傾向 すっきり〜辛口も 濃厚な甘口

味わいの特徴 とろみと甘み、そして酸

貴醸酒の味は、とろりとした口当たりと強い甘みが軸です。糖が多く残るぶん、蜜のような密度を感じます。梅酒を思わせる甘さと感じる人もいるほどです。

ただ甘いだけではありません。しっかりした酸が甘みを支え、後口を重たくしすぎません。この甘みと酸のバランスが、貴醸酒の飲みごたえを作ります。

もう一つの見どころが熟成です。貴醸酒は貯蔵によって色と風味が育ちます。時間をかけると淡い黄金色から琥珀色へ深まり、シェリーやマデイラ、上質な紹興酒を思わせる複雑さが出てきます。熟成による色と香りの変化そのものは熟成古酒の世界でくわしく扱っています。同じ貴醸酒でも、新酒とよく寝かせたものでは別の酒のように印象が変わるでしょう。

具体例を一つ。広島県呉市の榎酒造は、銘柄「華鳩(はなはと)」の貴醸酒を看板の一つに据えています。製法そのものを確立したのは前述の醸造試験所ですが、それを製品として世に送り出した先駆けが榎酒造です。同社は公式サイトで、自らを日本で初めて貴醸酒を醸した蔵と紹介しています。長期熟成させたものも手がけており、その味わいをシェリーやマデイラになぞらえています。こうした蔵元の言葉は、熟成した貴醸酒の方向性を知る手がかりになります。

楽しみ方 冷やして少量、食後にゆっくり

貴醸酒は、冷やして少量を味わうのが基本です。濃厚なので、食中にごくごく飲む酒ではありません。温度と場面で、次のように使い分けると外しにくくなります。

タイプ 温度 向く場面
新酒(若い貴醸酒) よく冷やす、またはロック 食前酒、食後の一杯
熟成したもの 少し冷やす、または常温 食後、休む前

冷やすと甘さが締まり、後味が軽くなります。ロックにすれば、氷が溶けるにつれて濃さがやわらぎ、飲み口が変わっていくのも楽しめます。温度で味がどう動くかは温度と保存の基本にまとめてあります。

料理と合わせるなら、味の濃いものを選ぶと釣り合いが取りやすいとされます。とりわけチーズとの相性がよく紹介されます。塩気と発酵の風味を持つブルーチーズのような濃厚なチーズは、貴醸酒の甘みと引き立て合う組み合わせとして挙げられます。フォアグラや濃い味の煮込み、あるいはデザート代わりに単体で、という楽しみ方も。合わせ方の考え方は料理とのペアリングを参照してください。

選び方とギフト 少量で食後に映える一本

贈り物を探しているなら、貴醸酒は選択肢に入れやすい酒です。理由は三つあります。

  • 少量でも満足感がある。濃厚なので、小ぶりの瓶でも十分に飲みごたえがあります。
  • 飲む場面が明確。ワインのデザートワインに近く、食後の一杯という飲みどきを相手に想像してもらいやすい。
  • 熟成の変化を楽しめる。すぐ開けても、しばらく置いてもよい懐の深さがあります。

選ぶときは、若い貴醸酒か熟成したものかを分けて考えると迷いません。爽やかな甘さを楽しみたいなら若いものを、複雑さやコクを求めるなら熟成したものを。飲む相手の好みに寄せて選べます。小ぶりの容量で出るものも多く、店では甘口やデザート向きの棚をたずねると見つけやすいでしょう。ギフト選びの全体像は贈り物としての日本酒、入手先の探し方は日本酒の買い方ガイドも役立ちます。

まとめ 甘口の入口、食後とギフトに

ここまでのポイントをまとめます。

  • 貴醸酒は、仕込み水の一部を清酒に替えて造る清酒。1970年代に旧国税庁醸造試験所が開発した製法がもと。
  • 酒で仕込むともろみのアルコールが高まり、酵母の働きが弱まって糖が残る。だから濃厚な甘口になる。
  • 味はとろみのある強い甘みと、それを支える酸。熟成で色が琥珀色へ深まり、複雑さが増す。
  • 冷やして少量、食後に。濃厚なチーズなどと合わせやすいとされる。ギフトにも向く。

甘口の日本酒の入口として、また食後のデザート代わりとして、貴醸酒は覚えておきたい一本です。次は味と香りの読み方熟成古酒の世界へ進むと、甘さと熟成の楽しみがさらに広がります。

※この記事は20歳以上の方を対象としています。飲酒は適量を守り、妊娠中・授乳期の方や運転前の飲酒は避けてください。

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