福岡県の日本酒銘柄一覧
寒山水
かんさんすい EC寒山水は喜多屋が醸す純米吟醸酒で、銘柄名は禅の世界観を感じさせる風雅な名称です。「寒山」は中国唐代の伝説的な詩僧の名であり、「寒山水」という言葉には冷たく清らかな山の水という意味も込められていると考えられます。 この銘柄には複数のグレードが存在し、特に「純米酒 寒山水 65%磨き」は、山田錦50%と福岡県八女産吟のさと50%をブレンドし、精米歩合65%に磨いた米を使用しています。酵母には福岡県オリジナルの「F44」を使用し、福岡県産の素材にこだわった酒造りを行っています。 味わいの特徴は、軽いフィニッシュですっきりとした辛めの仕上がりです。食中酒として設計されており、特に焼き鳥や焼き魚といった香ばしい料理との相性が抜群です。
蒼田
そうでん EC蒼田は喜多屋が醸す特約店限定流通の銘柄で、純米吟醸と純米大吟醸の両方のグレードが存在します。銘柄名の「蒼田」は青々とした田園風景を連想させ、八女の豊かな農地への讃歌のような名称です。 この銘柄の最大の特徴は、岡山県産の希少な酒米「雄町」を使用し、さらに喜多屋オリジナル酵母「KR02」を使用していることです。雄町は酒米の中でも特に栽培が難しく、希少価値が高い品種として知られており、その雄町の個性を最大限に引き出すために独自酵母を開発・使用しています。 味わいの特徴は、フルーティーでありながら食事を邪魔しない上品な香りと、雄町特有の力強い旨味です。純米大吟醸バージョンは山田錦100%を精米歩合39%まで磨き上げ、雫搾りで丁寧に搾られています。
吟の瞳
ぎんのひとみ EC吟の瞳は喜多屋の銘柄の一つです。銘柄名の「吟の瞳」は、吟醸の「吟」と、澄んだ瞳のように清らかで美しい酒を表現した詩的な名称です。 喜多屋が福岡県産の酒造好適米にこだわる姿勢の中で、この銘柄も地元の米と矢部川の伏流水を使用した酒造りが行われていると考えられます。喜多屋の特徴である緻密な洗米工程や、気温・湿度・水温を細かく調整する丁寧な仕込みにより醸されています。
あいのひめ
あいのひめあいのひめは喜多屋が醸す発泡性清酒で、瓶内二次発酵によるスパークリング日本酒です。銘柄名の「あいのひめ」は、愛の姫、または合いの姫など複数の意味を持つ可能性がある、優雅で親しみやすい名称です。 この銘柄の最大の特徴は、高級酒米を使用して瓶内で直接発酵させる製法を採用していることです。特に八女の契約栽培米「吟のさと」を使用したバージョンが存在し、地元の米にこだわった発泡清酒となっています。瓶内二次発酵により、きめ細かく自然な泡立ちを実現しており、シャンパンのような華やかさを持ちます。 味わいの特徴は、フルーティーで華やかな香りと、発泡感によるさわやかな口当たりです。甘さは控えめで、日本酒の旨味を残しながらも軽快に飲める仕上がりとなっており、日本酒初心者やワインを好む方にも親しみやすい味わいです。
喜多屋
きたや EC喜多屋は、蔵元名と同名の看板銘柄です。文政3年(1820年)の創業時から使用されている屋号であり、「酒を通して多くの人に喜びを伝えたい」という創業の志がそのまま銘柄名となっています。蔵元を代表する基幹銘柄として、幅広いラインナップを展開しています。 この銘柄には、純米大吟醸、純米吟醸、特別純米酒、本醸造など、多様なグレードと価格帯の商品が揃っており、日常酒から特別な日の酒まで、様々なシーンに対応できる懐の深さを持ちます。特に「純米吟醸 喜多屋 吟のさと」は、福岡県オリジナル酒米「吟のさと」を使用した代表的な商品です。 吟のさとは山田錦を親に持つ福岡県開発の酒造好適米で、喜多屋は開発段階から注目し、八女市の契約農家と自社田で栽培しています。この地元米と、釈迦岳・御前岳を源とする矢部川の伏流水を使用することで、八女のテロワールを表現した酒造りを実現しています。 喜多屋の銘柄は国際的にも高く評価されており、2011年サンフランシスコ国際ワインコンペティションでダブルゴールド、2013年ロンドンのIWCでチャンピオン・サケ賞を受賞するなど、世界的な品質の高さが認められています。
花宗
はなむね花宗は福島酒造の代表銘柄です。八女市本町という八女の中心地に位置する福島酒造により醸されています。八女地域の特徴である釈迦岳・御前岳を源とする矢部川水系の良質な伏流水を使用しています。 八女は福岡県を代表する米どころでもあり、地元産の酒米を使用し、八女の風土を反映した地酒としての性格を持っています。銘柄名の「花宗」は、華やかな香りや上品な味わいを持つ酒です。
博多一本〆
はかたいっぽんじめ博多一本〆は、福岡・博多を象徴するような「博多の酒」として楽しんでもらいたいという思いから誕生した純米酒です。銘柄名の「博多一本〆」は、博多独特の手締めである「博多一本締め」に由来しており、お祝いの席にも喜ばれる縁起酒としての性格を持ちます。 原料米には福岡県産の山田錦と夢一献を100%使用しており、精米歩合は55%です。地元福岡の米だけで醸すことにこだわり、福岡県産米の特性を最大限に活かした酒造りを行っています。アルコール度数は15度で、純米酒らしい米の旨味を感じられる設計となっています。 味わいの特徴は、穏やかな香りと滑らかな口当たり、そしてほど良い甘味です。口に含むとじわじわと広がるコクと旨味があり、すっきりと軽やかなノド越しでキレ良く仕上がっています。日本酒度は+1~+2のやや辛口で、甘すぎず辛すぎないバランスの良さが特徴です。
繁桝
しげます EC繁桝は株式会社高橋商店の看板銘柄で、江戸時代享保2年(1717年)創業以来300年以上の歴史を持つ蔵元を代表する銘柄です。銘柄名は十代目高橋繁太郎の名前の「繁」と、酒を量る「桝」を組み合わせたもので、「桝が益々繁栄するように」との願いが込められています。 この銘柄の特徴は、カリウム・リン酸・マグネシウムを適度に含んだ清冽な矢部川の伏流水を使用していることです。この水は発酵に理想的な成分バランスを持ち、繁桝の味わいの基礎を形作っています。原料米には山田錦・雄町・吟のさと・夢一献といった福岡県産の酒造好適米を使い分け、それぞれの米の個性を活かした酒造りを行っています。 製法面では、江戸時代から続く伝統的な製法を守りながら、現代的な品質管理技術も取り入れています。特に麹造りを重視し、昔ながらの木製の麹室で蔵人が手間と時間をかけて良質な麹菌を育てています。 繁桝のラインナップは幅広く、大吟醸、純米大吟醸、純米吟醸、特別純米酒、本醸造など、多様なグレードと価格帯の商品を展開しています。それぞれの酒質において、米の旨味を活かしながらキレの良い後味を実現しており、食中酒としての完成度が高いことが特徴です。
可也
かや可也は繁桝の特別なラインの一つで、主に純米大吟醸として展開される高級銘柄です。銘柄名の「可也」は、福岡県糸島半島にそびえる可也山(かやさん)に由来すると考えられ、福岡の美しい自然への讃歌が込められています。 この銘柄の最大の特徴は、福岡県糸島産の雄町米を使用していることです。雄町は岡山県が原産の希少な酒造好適米で、栽培が難しく生産量が限られていますが、その独特の力強い旨味とコクで日本酒愛好家に高く評価されています。糸島という福岡県を代表する米どころで栽培された雄町を使用することで、福岡県産米100%のこだわりを実現しています。 「繁桝 可也 雄町 純米大吟醸」は、糸島産雄町を高精白で丁寧に磨き上げ、高橋商店の伝統的な麹造りの技術により醸されています。雄町特有の複雑な味わいと奥深いコク、そして純米大吟醸ならではの華やかな香りが調和し、飲み応えのある逸品に仕上がっています。
枯淡
こたん EC枯淡は繁桝の熟成大吟醸シリーズの銘柄です。銘柄名の「枯淡」は、「枯れた」趣と「淡い」味わいを表現する言葉で、熟成によって角が取れ、円熟した味わいに達した酒を表現しています。禅的な境地を感じさせる、風雅な名称です。 この銘柄の特徴は、大吟醸を一定期間熟成させることで、通常の大吟醸とは異なる独特の味わいを引き出していることです。熟成により、新酒の時の華やかさや荒々しさが落ち着き、まろやかで深みのある味わいに変化します。 大吟醸ベースであることから、高精白の酒米を使用し、丁寧に醸した後に熟成させるという、手間と時間をかけた贅沢な造りを行っています。味わいの特徴は、熟成香と呼ばれる独特の香りと、まろやかで奥深い味わいです。通常の大吟醸のフルーティーな香りとは異なる、ナッツやドライフルーツのような複雑な香りが特徴で、味わいは円熟してまろやかで、長い余韻を楽しめます。
麹屋
こうじや麹屋は繁桝のラインナップの一つで、吟醸酒と純米吟醸酒の両方のグレードが存在します。銘柄名の「麹屋」は、麹造りへの強いこだわりを直接的に表現した名称です。高橋商店が麹造りを最も重要な工程の一つと位置づけ、木製の麹室で蔵人が手間と時間をかけて良質な麹菌を育てていることへの自信と誇りが込められています。 麹は日本酒造りの要であり、「一麹、二酛、三造り」という言葉が示す通り、酒質を決定する最も重要な要素の一つです。高橋商店では江戸時代から続く伝統的な麹造りの技法を守り続けており、「麹屋」という銘柄名はその技術の結晶を表現しています。 この銘柄は、昔ながらの木製麹室で丁寧に育てられた麹を使用し、代々伝わる伝統的な製法により醸されています。吟醸タイプと純米吟醸タイプがあり、それぞれ異なる味わいの特徴を持ちます。吟醸タイプは華やかな香りと軽快な飲み口が特徴で、純米吟醸タイプは米の旨味をより直接的に感じられる味わいとなっています。
金襴藤娘
きんらんふじむすめ金襴藤娘は後藤酒造場の代表銘柄で、340年以上の歴史を持つ蔵元の伝統と技術を表現した銘柄です。銘柄名の「金襴」は金糸で織った豪華な織物を意味し、「藤娘」は藤の花のように美しく優雅な娘を表現しています。この組み合わせは、華やかで気品のある酒を連想させる優美な名称です。 この銘柄の特徴は、黒木町の豊かな良質の地下水を使用していることです。黒木の地下水は清澄で、酒造りに理想的な水質を持っており、金襴藤娘の味わいの基礎を形作っています。原料米には最高級の山田錦や福岡県産の夢一献を使用し、高い品質を追求しています。 商品ラインナップは多様で、大吟醸酒、純米大吟醸酒、吟醸酒、吟醸生貯蔵など、様々なグレードと製法の商品を展開しています。中でも「金襴藤娘 大吟醸酒」は、山田錦を38%という高精白まで丁寧に磨き上げ、杜氏が丹精込めて造った大吟醸の原酒で、アルコール度数17度の力強い味わいを持ちます。 後藤酒造場の高い技術力は、全国新酒鑑評会で5回の金賞、福岡国税局酒類鑑評会で15年連続入賞という実績に裏付けられています。340年以上という長い歴史の中で培われた伝統の技と、黒木の豊かな自然の恵みが一体となり、金襴藤娘という華やかで気品のある酒を生み出しています。
旭松
あさひまつ旭松は旭松酒造の看板銘柄で、蔵元名と同じ名称を持つ代表的な銘柄です。「旭」は朝日を、「松」は常緑樹の松を表し、縁起の良い組み合わせとして、めでたさと不変性を象徴する銘柄名です。 この銘柄の最大の特徴は、大正5年の創業当時から変わらない、昔ながらの手造りによる伝統的な製法で醸されていることです。冬場の寒仕込みのみで酒造りを行い、現代的な四季醸造は行わず、冬の厳しい寒さの中でじっくりと醸すという、日本酒本来の製法を守り続けています。 製造工程では、創業以来続く伝統の「槽しぼり」にこだわり、もろみを酒袋に入れて槽に積み重ね、自然の重みと緩やかな圧力でじっくりと搾ります。この伝統的な搾り方により、雑味の少ない清らかな酒が生まれます。また、米をセイロで蒸すことで、米がふんわりと仕上がり、嫌な雑味が出ない特徴があります。 仕込み水には黒木の「超」軟水の地下水を使用しています。この極めて柔らかい水質により、飲み口の良い酒に仕上がっています。味わいの特徴は「濃厚」で、日本酒の中では味が濃い方に分類されます。生産量は年間でタンク4~5本程度と極めて少なく、県外はもとより福岡市内でもめったに飲むことのできない希少な地酒です。 伝統的な製法を一切変えずに守り続ける姿勢、少量生産へのこだわり、そして黒木の超軟水という独特の条件が組み合わさり、旭松という唯一無二の個性を持つ銘柄が生まれています。
千代錦
ちよにしき千代錦は野田酒造の代表銘柄で、大正十二年に新嘗祭において献穀の栄に浴したことを記念して命名された歴史ある銘柄です。銘柄名には永遠の繁栄と華やかさを祈る意味が込められており、献穀という栄誉が蔵の米作りと酒造りの品質の高さを証明しています。 原料には筑後平野で収穫される良質な米を使用し、矢部川水系の清らかな伏流水で仕込まれます。筑後地方の豊かな水と米の恵みを最大限に活かした、地域に根ざした酒造りが特徴です。 千代錦のラインナップには純米酒、本醸造「幸若舞」、吟醸「酒仙」などがあり、それぞれ異なる味わいの特徴を持ちます。全体として筑後地方の淡麗な味わいをベースとしながら、米の旨味も感じられるバランスの良い酒質を目指しています。 野田酒造は古代米を使った酒造りでも知られており、千代錦ブランドと並行して「古代米 赤米酒」も製造しています。この古代米への取り組みは、伝統的な日本酒造りの技術を継承しつつ、新しい可能性に挑戦する蔵の姿勢を表しています。 地元みやま市を中心に愛飲され、筑後地方の食文化に寄り添う食中酒として、また祝いの席にもふさわしい縁起の良い銘柄として親しまれています。
友ひさご
ともひさご友ひさごは星隈酒造の代表銘柄で、筑後地方の伝統的な酒造りの技術を受け継いだ地酒です。銘柄名の「友ひさご」は、瓢箪(ひさご)を意味し、古来より縁起の良いものとされています。 仕込み水には矢部川水系の良質な伏流水を使用し、筑後平野で栽培される酒米を原料として醸されています。福岡県の水は軟水が多く、これにより口当たりがまろやかで繊細な味わいの日本酒が生まれます。 筑後地方の日本酒は、福岡県全体の淡麗辛口の傾向とは異なり、旨口で甘味のあるタイプも多く造られています。友ひさごも地元の食文化に寄り添う食中酒として、筑後地方の郷土料理との相性を重視した味わい設計がなされています。 地元みやま市を中心に流通しており、地域に密着した銘柄として親しまれています。星隈酒造の併設販売所で購入することができ、地元の方々に愛される地酒として、筑後地方の酒文化を支える銘柄の一つです。
池泉
いけいずみ池泉は池田屋の代表銘柄で、福岡県の豊かな自然の恵みを活かして醸される地酒です。銘柄名の「池泉」は、池から湧き出る清らかな泉を意味し、良質な水を使用した酒造りへの自信と、清らかで澄んだ酒質を表現していると考えられます。 福岡県は山田錦の主要産地であり、池泉もこの良質な酒米を使用している可能性が高いです。福岡県産の酒米と県内の良質な軟水を組み合わせることで、口当たりがまろやかで繊細な味わいの日本酒が生まれます。 福岡県の日本酒は全体として淡麗辛口の傾向がありますが、蔵元ごとに個性があり、池泉も池田屋独自の酒造りの技術と理念を反映した味わいを持っていると考えられます。すっきりとした飲み口と、米の旨味のバランスを大切にした酒質が特徴と推測されます。 地元を中心に流通しており、福岡県の食文化に寄り添う食中酒として親しまれています。もつ鍋や水炊きなど福岡の郷土料理との相性も良く、地域の食卓を彩る地酒として愛されていると考えられます。 池田屋では池泉ブランドの他に、福寿池泉という銘柄や料理用清酒、酒塩なども製造しており、清酒製造の技術を活かした多様な商品展開を行っています。
菊美人
きくびじん EC菊美人は菊美人酒造の看板銘柄で、享保二十年の創業以来三百年近くにわたり醸され続けてきた歴史ある銘柄です。銘柄名は「菊」の気高さと「美人」の優美さを組み合わせたもので、上品で華やかな日本酒を目指す蔵元の理念を表しています。 この銘柄の最大の特徴は、柳川の詩聖・北原白秋との深い縁です。白秋の実姉が六代蔵元の妻であった縁から、白秋は菊美人酒造を度々訪れ、菊美人を愛飲しました。白秋が揮毫した「菊美人」の書は現在も酒ラベルに使用されており、文化的価値の高い銘柄として知られています。 仕込み水には矢部川の伏流水を使用し、原料米には酒造好適米の山田錦と筑後地方の酒米「夢一献」を厳選しています。柳川杜氏の伝統的な技術により、九州らしいのどごしのある濃醇な味わいが特徴です。 製品ラインナップは多岐にわたり、純米吟醸酒は厳選した山田錦を55%精米し、全て蔵人の手づくりで低温発酵させることで、やさしいまるみと吟醸香が広がる味わいを実現しています。特別純米酒は福岡県産の夢一献を60%磨いた白米と筑後の良水でていねいに仕込み、やや辛口で豊かな旨みとふくらみを持つ酒質です。 福岡国税局酒類鑑評会で金賞を連続受賞し、福岡県酒類鑑評会で福岡県知事賞と福岡県議会議長賞を受賞、IWC(インターナショナル・ワイン・チャレンジ)で金賞を獲得するなど、その品質の高さは国内外で認められています。 北原白秋が愛した日本酒として、文化的背景を持ちながらも、現代の技術と伝統の技が融合した高品質な日本酒として、地元筑後地方はもとより広く愛される銘柄です。
九州男児
きゅうしゅうだんじ九州男児は菊美人酒造が醸す銘柄の一つで、九州男児の気概と力強さを表現した銘柄名が特徴です。「九州男児」という名称は、九州の男性の勇ましさ、豪快さ、そして人情に厚い気質を象徴する言葉であり、その名の通り力強い味わいを持つ酒を連想させます。 菊美人酒造の他の銘柄と同様に、矢部川の伏流水を仕込み水とし、福岡県産の良質な酒米を使用して醸されています。柳川杜氏の伝統的な技術により、九州らしい個性を持った酒質に仕上げられていると考えられます。 菊美人酒造は主力銘柄「菊美人」で知られていますが、九州男児という銘柄を通じて、より幅広い層の日本酒愛好家に向けた製品展開を行っています。菊美人が優美で繊細な味わいを追求しているのに対し、九州男児は名前が示す通り、よりストレートで力強い印象の酒質を目指しています。 筑後地方の郷土料理や、九州の濃い味付けの料理との相性を重視した食中酒として、地元を中心に親しまれていると考えられます。もつ鍋や水炊きなど、福岡の名物料理とも好相性の日本酒です。 菊美人酒造の高い醸造技術と品質管理のもとで造られており、同蔵の国内外での受賞歴が示すように、確かな品質を持った銘柄として信頼されています。
神力
しんりき神力は玉水酒造が誇る純米大吟醸で、幻の酒米「神力」を復活させて醸す極めて希少な銘柄です。神力という酒米品種は大正から昭和初期にかけて栽培されていましたが、その後栽培が途絶え、長い間「幻の酒米」となっていました。これを玉水酒造の山下茂氏らが復活させ、現代に蘇らせたことは、日本酒業界においても特筆すべき功績です。 この純米大吟醸は精米歩合50%まで磨き上げ、吟醸造りの手法で丁寧に醸されています。しかし年間の生産量は約一千本(一升瓶換算)程度と極めて限られており、入手困難な日本酒として知られています。 味わいの最大の特徴は、一般的な山田錦を使用した大吟醸酒とは異なる個性です。山田錦の大吟醸が華やかな吟醸香を持つのに対し、神力を使用したこの酒は香りが控えめで、むしろ米本来の旨味を存分に味わえる酒質となっています。洗練された舌触りと、神力という酒米がもたらす自然な旨味が調和し、日本酒の原点を感じさせる味わいです。 生産された酒のほとんどは地元みやま市周辺で消費され、福岡市内や東京・大阪などの大都市圏ではほとんど流通していません。このため、真の地酒中の地酒として、知る人ぞ知る銘酒となっています。 幻の酒米を復活させたロマンと、天然醸造による伝統的な製法、そして限定的な生産量が相まって、神力は日本酒愛好家の間で特別な存在として位置づけられています。昭和の時代の日本酒の味わいを現代に伝える、文化的価値の高い銘柄です。
玉水
たまみず玉水は玉水酒造の代表銘柄であり、蔵の名を冠した看板商品です。銘柄名の「玉水」は、宝石のように美しく清らかな水を意味し、良質な仕込み水を使用した酒造りへの自信と、清らかで澄んだ酒質を表現しています。 明治十一年の創業以来、百年以上にわたり地元みやま市高田町で醸され続けてきた歴史ある銘柄で、地域の人々に深く愛されてきました。戦時中の休業を経て昭和三十年に復活して以来、五代目の山下茂氏を中心に、天然醸造という伝統的な製法を守り続けています。 味わいの特徴は、濃厚でしっかりとした味わいです。地元の契約栽培米である山田錦や麗峰などを使用し、自然の力を最大限に活かした天然醸造により、米本来の旨味とコクを引き出しています。福岡県全体の淡麗辛口の傾向とは一線を画し、筑後地方特有の旨口で味わい深い酒質を持っています。 製品ラインナップには純米酒、本醸造、普通酒など多様な種類があり、それぞれの価格帯で玉水らしい濃厚な味わいを楽しむことができます。地元の食文化に寄り添う食中酒として、筑後地方の郷土料理との相性が良く、日常の食卓を彩る酒として親しまれています。 玉水酒造の製品のほとんどは地元で消費されるため、福岡市内や大都市圏ではほとんど流通していません。このため玉水は真の地酒として、地元の人々のみが楽しめる特別な存在となっています。蔵の併設販売所やオンラインストアで購入可能ですが、その味わいを求めて遠方から訪れる日本酒愛好家も少なくありません。 天然醸造という伝統的な製法を守りながら、地域に根ざした酒造りを続ける玉水酒造の理念が凝縮された、筑後地方を代表する地酒です。