合同会社西出酒造は大正2年(1913年)に小松市下粟津で創業した蔵元で、波乱に富んだ歴史を持ちます。
1996年に経営難で一度他社に譲渡され、蔵名は「金紋酒造」、銘柄も「春心」から「金紋」へと変更されましたが、2014年に創業家の西出裕久氏が蔵を買い戻し、西出酒造の名と「春心」ブランドを復活させました。この復活劇は、地酒への愛と伝統への執念が成し遂げた感動的な物語として知られています。
現在は家族4人だけの真の家族経営で、木の蒸籠での米蒸しから伝統的な佐瀬式槽での搾りまで、全てアナログで手間のかかる工程を大切にし、年間約50石という少量生産を行っています。生産理念は「自然との共生」で、石川県産の原料のみを使用し、100年前の生酛造りという伝統製法により、地元の乳酸菌を活用した本物の味わいを追求しています。
春心の特徴は、力強い旨味と個性的な酸味が飲み手に強い印象を与えながら、幅広い料理との相性も良い懐の深さです。小規模ながら妥協を許さない酒造りは、伝統製法へのこだわりと、石川県産素材への愛着が生み出す、唯一無二の個性として結実しています。
一度は失われかけた蔵と銘柄を蘇らせ、伝統的な生酛造りを守り続ける西出酒造は、家族の絆と地酒への情熱が生んだ奇跡の蔵です。