ポンシュ

Ponsh

日本酒テイスティングの実践 一杯を外観・香り・味・余韻で読み解く

味わい・香り#初心者#tasting#taste#aroma

一杯の日本酒を外観・香り・味・余韻の順に見ていくと、味の違いを自分の言葉にできます。特別な訓練は要りません。器と明るい場所があれば、家でも店でも試せます。最初から全部やる必要もありません。まずは色と香りを見るだけでも、立派なテイスティングです。

この記事は、きき酒の手順とテイスティングノートの付け方を、初心者の言葉でまとめた実践ガイドです。味と香りの見方は味と香り、器の言葉は器と単位と合わせて読むと理解が早まります。

テイスティングの準備 器・温度・明るい場所

評価の前に、条件をそろえます。同じ条件で見ると、酒どうしの違いがはっきりするからです。整えるのは器・温度・光の3つ。

項目 目安 理由
きき猪口かワイングラス 口が広く、香りを取りやすい
温度 まず常温(20度前後) 冷やしすぎると香りと味が閉じる
白い壁や紙の前、明るい場所 色や冴えを正しく見るため

常温近くから始めるのは、香りと味が動きやすい温度帯だからです。冷やしすぎると、香りが立たず、味の輪郭もぼやけます。まず常温で基準を取り、そのあと温度を変えて違いを見ると、感覚をつかみやすくなります。温度による変化は温度と保存でくわしく扱います。

きき酒には、蛇の目(じゃのめ)のきき猪口がよく使われます。白い磁器の底に、紺の同心円が描かれた器です(→器と単位)。白い部分で色を、紺の部分で透明度を見ます。手元になければ、内側が白いカップやワイングラスでも代わりになります。

手順1 外観 色と透明度を見る

最初に見るのは色と透明度です。きき猪口に八分目ほど注ぎ、白い背景の前でのぞきます(月桂冠「きき酒による品質の評価」)。

色は、無色に近いものからうすい黄金色、熟成した濃い山吹色まで幅があります。若い酒は淡く、熟成した酒ほど色が濃くなります。透明度では、にごりや浮遊物がないかを確かめます。蛇の目の紺色は、黄色みの変化を見分けやすくする工夫でした。

手順2 香り 上立ち香と含み香を取り分ける

香りは2段階で取ります。飲む前と、口に含んだあとの2回です。分けて取ると、香りの印象を正しく書けます。

上立ち香(飲む前に立つ香り)

  1. きき猪口を軽く回す
  2. 鼻を近づけ、小刻みにかぐ(酒類総合研究所)

りんごや洋梨、バナナのような果実の香りが、いわゆる吟醸香です。米や麹の穏やかな香りが立つ酒もあります。

含み香(口に含んでから鼻へ抜ける香り)

  1. ひと口の半分(5mlほど)を口に含む
  2. 舌の上で転がす
  3. そのまま息を鼻から抜く

上立ち香は弱くても、含み香がふくらむ酒があるからこそ、2段階で取ります。香りの言葉を身近な例にほどく話は味と香りにまとめました。

手順3 味 甘・酸・旨・苦とアタック・余韻

味は、甘味・酸味・旨味・苦味の4つに分けて捉えます。伝統的には、辛味・渋味を加えた五味で語られることもあります。ここでは前者の4要素で見ていきます。この4要素のバランスが、酒の骨格を作ります。

ひと口を、アタック(入口)→4要素(甘・酸・旨・苦)→余韻(後口)の順に追いかけます。まず口に含んだ瞬間の第一印象がアタックです。甘くやわらかいか、辛くシャープか。この入口の印象で、酒の性格の見当がつきます。続いて、舌全体で4つの味を追います。甘味は先に立ち、苦味は後に残ります。味は時間差で現れるため、ひと口をゆっくり転がして確かめます。下の表は、追う4要素の目安です。

要素 感じ方 目安の言葉
甘味 舌の前でふくらむ丸み まろやか、ふくよか
酸味 全体を引き締めるさわやかさ すっきり、キレ
旨味 舌に広がる厚みとコク ふくみ、こく
苦味 後半に残るほろ苦さ ドライ、引き締まり

飲みこんだあとに口へ残る味が余韻です。すっと消える酒はキレがあり、長く続く酒は余韻が長いと書きます。アタック・4要素・余韻の順に追えば、味の輪郭がつかめます。

手順4 記録 テイスティングノートを付ける

感じたことは、その場で短く書きます。記憶はすぐ薄れるからです。項目を決めておくと、あとで見返せます。

ノートは6項目でそろえます。色・香り・味・余韻・4タイプの位置・料理の相性の6つ。下は一例です。

項目 書き方の例
うすい黄金色、澄んでいる
香り 上立ち香はりんご、含み香は控えめ
甘味おだやか、酸味しっかり
余韻 短くキレる
4タイプ 香り高め・味軽め=薫酒
料理 白身魚の刺身に合いそう

4タイプとは、香りの高低と味の濃淡で日本酒を区切る分類です(→味と香り)。料理の相性は、思いついたものを書けば十分。合わせ方の考え方はペアリングにあります。

味を客観視したいときは、ラベルを見る前に評価する方法もあります。銘柄名や精米歩合を先に知ると、印象が引っぱられるためです。まず自分の感覚で書き、あとで答え合わせをします。

上達のコツ 比べて、続ける

感覚は、比べることで育ちます。1本だけでは、自分の中に基準ができません。次の3つを続けると、使える言葉が増えていきます。

  • 飲み比べ。2〜3本を並べ、同じ項目で比べると違いが際立つ
  • 温度違い。同じ酒を冷やと燗で飲むと、香りと味の変化が分かる(→温度と保存
  • 同じ言葉で続ける。自分の物差しを固定すると、表現がぶれない

完璧な言葉は要りません。りんご、ごはん、すっきり。身近な言葉で十分です。手順を一度なぞれば、次の一杯から見え方が変わります。

※この記事は20歳以上の方を対象としています。飲酒は適量を守り、妊娠中・授乳期の方や運転前の飲酒は避けてください。

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