株式会社車多酒造は文政6年(1823年)創業で、白山市鶴来の加賀平野を一望する地に蔵を構える、200年の歴史を持つ老舗蔵元です。
最大の特徴は山廃造りの代名詞とも言える存在で、「日本酒の真の旨味は山廃の旨味」という哲学のもと、伝統的な山廃仕込みを守り続けています。1970年代、七代目当主・車多敏郎と杜氏・中倉三郎が山廃造りの確立に心血を注ぎ、天狗舞スタイルの山廃醸造法を完成させ、以降毎年改良を重ねて現在に至っています。
山廃造りは「山卸し廃止酛」の略で、酒母を造る際の重労働である山卸し作業を省略した製法ですが、自然の乳酸菌と酵母がゆっくりと育つことで、独特の深い味わいが生まれます。天狗舞の山廃純米酒は、濃厚な旨味と酸味が調和した力強い味わいが特徴で、「山廃造りといえば天狗舞」と称されるほどの名声を確立しました。
2011年にはロンドンで開催されたIWC(International Wine Challenge)の純米酒部門で、金賞受賞酒の中から最優秀となるトロフィーを獲得するという快挙を成し遂げ、国際的にも極めて高い評価を得ています。
霊峰白山の麓という立地を活かし、白山の伏流水を仕込み水に使用し、石川県産米や山田錦などの酒造好適米で醸す天狗舞は、伝統的な山廃造りを現代に伝える、石川県を代表する銘醸蔵です。