常磐酒類は福島県いわき市に所在していた酒造で、「美ち乃久（みちのく）」という銘柄を製造していました。
いわき市は炭鉱産業の最盛期には30～40軒もの酒蔵が存在し、労働者たちの需要に応える形で地酒文化が栄えていました。
常磐酒類もそうした時代背景の中で地域の酒造業を支えてきた蔵元の一つでしたが、産業構造の変化とともに廃業となりました。

「美ち乃久」という銘柄名は「みちのく（陸奥）」に通じ、東北地方の豊かな自然と文化を表現する命名でした。
いわき地方の温暖な気候という酒造りには難しい条件の中で、醪の温度管理に細心の注意を払いながら酒造りを行っていました。
現在いわき市で仕込みを行う蔵は2軒のみとなっており、常磐酒類が担っていた地域の酒造文化の一端は、歴史の中に刻まれています。