渡邉酒造（わたなべしゅぞう）は、1892年（明治25年）に創業した、栃木県大田原市に居を構える老舗酒蔵です。那須連山がもたらす清冽な地下水と、地域で育まれた良質な酒米を使用し、130年以上にわたって「実直な酒造り」を継承してきました。五代目となる渡邉英憲氏が杜氏も務め、小規模ながらも丁寧な手造りの製法にこだわり抜いています。
主力銘柄の「旭興（きょくこう）」は、1912年の蔵移転を機に「朝日が昇るが如く勢いよく興る」という願いを込めて命名されました。栃木県内での消費が99%に達すると言われるほど地元に深く愛されており、派手さを抑えた穏やかな香りと、米の旨味が調和した飲み飽きしない味わいが最大の特徴です。
伝統を重んじながらも、燗酒に特化した「たまか」など、日本酒の多様な楽しみ方を提案し続ける渡邉酒造は、大田原の豊かな風土と職人の情熱を、一本一本の酒に静かかつ力強く込めています。