いそのさわは1893年（明治26年）に創業された、福岡県うきは市浮羽町に位置するうきは市唯一の酒蔵です。
創業者である髙木喜三郎の父「いそきち」と母「さわ」の名前を組み合わせて「いそのさわ」と名付けられ、家族への愛情と敬意が社名に込められた、温かみのある蔵元です。
うきは市は「名水の郷」として知られ、全国でも珍しい「水道の無い町」として、全世帯が井戸水または山水を生活用水として利用しているという、自然の名水に恵まれた特異な地域です。清水湧水は「日本名水百選」にも選定されており、この豊富で良質な水がうきは市の最大の特徴です。いそのさわは創業以来130年以上にわたり、蔵の井戸から湧き出る湧水を仕込み水として使用しており、「名水あるところに銘酒あり」という言葉を体現しています。
この地域の水は耳納連山に降った雨が長い年月をかけて地下で濾過され、ミネラルバランスに優れた軟水として湧き出ます。いそのさわの酒質の特徴である、やわらかく滑らかな口当たりと上品な味わいは、この名水の恩恵によるものです。水の良さが酒の品質に直結するという信念のもと、水を最大限に活かした酒造りを実践しています。
主力銘柄は「磯乃澤」「駿」「優」「中洲」で、それぞれ異なるコンセプトと味わいを持っています。特に純米酒「駿」は、2025年フランス・Kura Master純米酒部門で金賞を受賞し、国際的な評価を獲得しました。また、スパークリング純米吟醸酒「うきは 泡にごり」は、ワイングラスでおいしい日本酒アワード2025プレミアムスパークリングSAKE部門で金賞を受賞するなど、革新的な製品開発にも積極的に取り組んでいます。
2020年代には敷地内にある築約130年の古民家を改装し、「うきは酒宿 いそのさわ」をオープンしました。この宿泊施設では、日本酒飲み放題プランやサウナ施設も楽しめ、地元のうきはの食材を使った料理と蔵元の日本酒を堪能できる、酒蔵ツーリズムの新しい形を提案しています。宿泊者は酒蔵見学や日本酒の試飲を通じて、いそのさわの酒造りを深く体験できます。
うきは市の豊かな自然と名水の恵み、そして130年以上にわたる伝統技術を受け継ぎながらも、宿泊施設の開設やスパークリング日本酒の開発など、革新的な取り組みにも挑戦する姿勢が、いそのさわの大きな魅力です。「名水あるところに銘酒あり」を体現する蔵元として、うきはの地酒文化を牽引しています。