福乃友酒造は秋田県大仙市刈和野に位置する小規模な酒造で、「福乃友」と「冬樹」という対照的な二つの銘柄を展開しています。
「福乃友」は福を呼ぶ酒、友と共に楽しむ酒という意味を込めて名付けられた伝統的な銘柄で、地元の日常の食卓に寄り添う親しみやすい酒です。淡麗辛口の味わいが特徴で、食事と合わせやすく、飲み飽きしない設計となっています。
一方「冬樹」は福乃友酒造の挑戦的な側面を象徴する銘柄です。最大の特徴は、酒造好適米ではなく食用米「あきたこまち」を使った酒造りに取り組んでいる点で、一般的に日本酒には不向きとされる食用米を、蔵元の技術と工夫で個性ある酒に仕上げています。この試みは「地元で親しまれている食用米でも美味しい酒を造れる」という信念に基づき、秋田の風土を活かす新たなアプローチとして注目されています。
仕込水には奥羽山系の良質な水を使用し、大仙市の寒冷な気候という恵まれた環境の中で、丁寧な手作業による少量生産を行っています。
福乃友酒造は家族経営の小さな蔵ですが、伝統的な「福乃友」で地域に根ざしつつ、「冬樹」のような新しい試みで日本酒の可能性を広げる、挑戦と伝統のバランスを大切にする蔵です。
同じ大仙市には刈穂酒造、出羽鶴酒造、奥田酒造店といった個性豊かな蔵が並び、奥羽山脈の恵みと雄物川の水系に支えられた大仙市の酒造文化の一翼を担っています。