菊美人酒造は江戸時代の享保二十年（1735年）に創業した、三百年近い歴史を持つ老舗酒蔵です。現在の蔵元は九代目であり、屋号は薩摩屋として知られています。福岡県みやま市瀬高町に位置し、筑後地方の酒造りの伝統を脈々と受け継いできました。
最大の特徴は、柳川の詩聖として知られる北原白秋との深い縁です。六代蔵元・江崎喜三郎の妻・加代は北原白秋の実姉であり、この縁により白秋は菊美人酒造を度々訪れました。白秋は故郷の柳川及び瀬高町の清水山山頂にて歌会を催し、菊美人の菰かぶりを飲み干した後、墨痕淋漓と「菊美人」の三文字を大書しました。この白秋直筆の書は現在も酒ラベルに使用されており、蔵には白秋が遺した三幅の扁額が大切に保存されています。
仕込み水には矢部川の伏流水を使用し、原料米には酒造好適米の山田錦と筑後地方の酒米「夢一献」を厳選しています。柳川杜氏の入魂の技術により、九州らしいのどごしのある濃醇な味わいの酒を醸しています。
近年の受賞歴も輝かしく、福岡国税局酒類鑑評会で金賞を連続受賞、福岡県酒類鑑評会で福岡県知事賞と福岡県議会議長賞を受賞、さらにIWC（インターナショナル・ワイン・チャレンジ）で金賞を獲得するなど、国内外で高い評価を得ています。
製品ラインナップは純米吟醸酒、特別純米酒、本醸造、大吟醸など多岐にわたり、それぞれの酒質で異なる味わいの特徴を提供しています。地元を中心に愛され続けながらも、その品質の高さは国際的にも認められており、伝統を守りながら進化を続ける蔵元です。